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独占インタビュー: IBMやスターバックスを支えたSYPartnersによる、日本企業がパーパス・ドリブンとなるためのヒント

更新日:9月29日

*こちらは、弊社オリジナルタブロイド TOKYO2020上にて掲載したインタビューですが、このたび弊社CEO齊藤三希子の著書『PURPOSE BRANDING 〜 「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える』出版を記念し、当著書に多大なるインスピレーションをくれたこちらの記事を特集して、再掲載いたします。


リーダー層、チーム、組織に対し、活力を与える変化を促し、その組織がパーパスとともに成長し、世界にポジティブな影響を与えられるよう、アメリカ・NYとサンフランシスコをベースに活動するコンサルティング会社・SYPartners。

Starbucks、IBM、Apple、Nike、Obama Foundationなど、世界的に影響力のある組織をクライアントとしています。

創業者のキース・ヤマシタ氏、そしてクリエイティブディレクターのジャリン・タバタ氏がアメリカよりはるばるSMOに来社され(*2019年12月)、ビジネスにおけるパーパスについて様々なお話を伺いました。

(インタビュー:SMO 齊藤三希子・青山永)



人々がパーパスに惹かれるのはなぜでしょうか?

世界は工業的な時代から人間的な時代にシフトしつつあり、人々にとって「意味」というものがより重要になってきています。人々は、意味や意義という概念のある組織で働きたいと思うはずです。強いパーパスがあるというのは魅力的ですし、能力のある人を惹きつけることができます。また、現在は知識経済なので、コンセプトと持つこと、知識を増やすことが重要です。それは機械に頼れない部分ですから。


アメリカや日本以外の国でパーパス先進国はどこでしょうか?

SYPartnersのクライアントは世界中にいますが、例えば中東でしょうか。中東では違ったダイナミクスで広がっていて、まず伝統と歴史があって、その上で市民がどう生活したいかに基づいています。イギリス、ドイツ、西ヨーロッパでも活発です。中国も興味深いコンセプトが存在します。従業員を雇うにあたり、パーパスが存在することは絶対です。また、それは義務感からではなく、企業が自ら望んでパーパスを策定しなければなりません。それは世界のどこでも同じです。従業員はどうしたいのか、何を欲しているのか。企業はパーパスを持つことのベネフィットをきちんと認識していなければなりません。


パーパスが求められているのはミレニアル世代が関係しているのでしょうか?

そうですね、彼らは意義や理由を重視するので、それも大きいと思います。ただ、それに加えて、人間の本能的なものがあると思っています。コンピューターにできることが増えても、クリエイティブなことは人間にしかできません。クリエイティビティというのはコマンドやマニュアルから生まれるものではなく、インスピレーションや疑問、チャレンジ精神によって生まれるものですから。


世界中の優良企業がこぞってSYPartnersに依頼をするのはなぜでしょうか?

パーパスのアクティベーションを行うにあたって、それを行う私たちSYPartners自体がパーパスを信じていなければいけないのは当然ですが、SYPartnersのメンバーはかなり多様なバックグラウンドを持ちながら、皆パーパスドリブンな会社または部署出身です。SYPartnersにはそういった人間が集まり、さらにクライアントの会社のトップの人間にも似たようなビジョンがあるからこそ、我々を選んでくれるのではないかと思っています。SYPartnersは人間性を重視する世の中を作りたいと思っています。それは、より多くの人が参加できる世の中であり、皆クリエイティブで、常に自分のベスト状態で居られるような世の中です。

トップの人間同士の紹介で依頼が来ることがほとんどですが、高いレベルのサービスはもちろんのこと、トップの人間が困っていることや感じていることに対するケアに時間と労力を割いています。相手の感覚に対して感覚で応えるという意味で、1%にも満たないトップの人間に対してユニークな感覚を提供しているのではないでしょうか。




依頼されたクライアントが自分達の方向性と違う場合は?

こことは合わなそうだなと感じた場合や、そもそもの動機が良くないような場合には、依頼を受けないという選択をすることもありますが、可能な限りその背後にあるものを見るようにはしています。そのネガティブな部分の本質を掘り起こして、本当はどうしたいのか、彼らがいかに改革のために本気になれるか、そのために私たちがどうヘルプできるかを考えるのもまた仕事ですから。

また、疑いや抵抗というのは、そもそも防衛本能からくるもので、たとえ前向きでない状態であっても、それを克服して、パーパスを策定して一度受け入れると変わってくるものです。

ただ、そういう依頼が多い時もあって…。希望もなく向上心もないようなクライアントの場合はやんわりと断ることもあります。


私たちSMOがクライアントのパーパスを策定するときは、「クライアントがもともと持っているはずのパーパスを、ディスカバーする」と言っています。SYPではどのように考えていますでしょうか?

隠された奥底に存在する「真実」を見つけるのが私たちの仕事です。

では、今までの状態は本当に真実の状態なのでしょうか?IBMのように、長く続く企業は、歴史を掘り起こして真の状態を探って、それを明文化します。新しい企業の場合は、歴史はなくても、やる気や望みといったものがあります。いずれにせよ、取り繕うように作るものではなくて「真実」を深掘りして掘り起こす。人というのは内に秘めた真実の姿を持っているもので、それを言葉にできていなかったり、はっきりとわかっていないというだけ。それを具体化して、言葉にするのが私たちの仕事です。


個人のパーパスと、その人が働く組織のパーパスは、同じであるべきでしょうか?

真の現代企業・現代ワーカーという意味では、それぞれのパッションの熱い部分に重なりがあるべきだとは思いますが、完全に一致する必要はないと思っています。人が世の中に対して、どうしたいという思いは、人も企業もいろいろな考えがあって当然です。望みや欲求の多様化に対応するためには、世の中をいろんな視点から見る必要があり、それこそが企業をよりイノベーティブにすると考えています。企業のパーパスと個人のパーパスが一致し、従業員が自分の興味分野を追求できるのが理想的です。それによってその人が意図していなかったところまで到達できるかもしれません。


パーパスのない企業はパーパスを持つべきでしょうか?

平均的で十分だとか、数をこなせば問題ないと思っているコモディティ企業や、クオリティを求めずに「安かろう早かろう」で良いと思っている企業なら、なくても良いと思います。パーパスドリブンというのは、他の企業と競うにあたって、プロダクトのクオリティだけでなく、そこにある意味や競う上での信念が重要になってきます。つまり、その企業の持ち味を活かすということ。日本企業は、そこにこそ他との違いを出せると思います。日本よりも製造面で安く速く作れる国は沢山あれど、日本はハイエンド市場に対するリスペクトや、ブランド愛、企業忠誠心といったところで一線を画しているので、それを売りにしていくべきです。日本はブランドについての知識があり、ブランドの意味やクオリティへの判断もよく理解しています。そしてブランドに対するを判断力や消費者基盤の見定めも確かです。海外の日本ブランドに対する信頼性は高く、何十年にもわたるファンは多く存在します。メイドインジャパンや、日本から来たものに対する忠誠心というのは根強く、ブランドが少々ミスをしても失墜はしないと信じてくれるファンがいるのです。例えば、最近理念を新しくパーパスにしたソニー。私も昔からソニーのファンだし、今も好きです。80~90年代に比べてソニー製品を買う機会は減りましたが、ブランドに対しては高く評価しています。日本にはそうした、世界を惹き付けるような素晴らしい面が多くありますね。


そう言っていただけると嬉しいです。我々もパーパスが日本企業を強くすると信じています。

日本発のグローバルブランドは増えていて、それぞれ非常にパーパス的で、世界というステージでもリーダーシップの存在感を示していますね。日本のマーケットそのものは、大きいわけではないのですから、どんどん世界に出るべきですし、そうなってくるとよりパーパスが重要になります。値段を安く抑える価格競争よりも、そこで違いを出すのがキーになってくるのです。例えば、アップルが新製品を出す時に、実際その製品を作るのにかかったコストに対して、実際の販売価格がいくらなのか。その差を埋めるのが“ブランド愛”です。日本はすでに「クオリティ」や「ケア」に関して、世界に誇れる感覚を持っているんです。


ラリー・フィンクの書簡でパーパスについて語ったことが、日本でも記事になり、経済界で大きなニュースとなっています。

ラリー・フィンクも、私たちのクライアントです。ラリーとSYPartnersの考えには元々共通性が多く、私たちが特に共感するのは、「ビジネスは社会的貢献にポジティブな影響を与えなくてはならない」ということ、さらに「そのビジネス規模が大きいほどその貢献も大きくあるべきだ」ということです。また、文化やバックグラウンドにおけるダイバーシティやインクルージョンを推進しており、そうした意見を世間に向けて積極的に発信しようとしている点もですね。ビジネスはCEOが中心となってどんどん外に向けて発言してこそ、発展するのですから。


あのラリー・フィンク氏もクライアントなんですね!では、日本企業はどのようにパーパス書簡を受け止めるべきでしょうか?

ラリーの考えと、日本企業の考え方には共通する部分が多いですね。ハーバード教授のHiro Takeuchi(竹内 弘高 さん)は、日本と西洋の企業をよく勉強していて、聡明で素晴らしい方ですが、彼の著書“Wise Company”の中で、元々日本企業が持つ長期的な考えと、より多くのステークホルダーを考慮したやり方に、西洋の考えも取り入れて、「ワイズ・キャピタリズム」を説いています。

SYPartnersでは、“Beautiful business”というフレーズを使い始めていて、それは世界に与えるポジティブなインパクトを追求するビジネスを意味しています。自社の利益ばかりを考えるのではなく、社員のことを考えたビジネス、もしくは、コミュニティのための、地球のためのビジネス。個人的には、日本は元々、長期的な考え方ができる国だと思っています。Beautiful businessをより広げていくためにも、元来そういう考え方のあった日本企業にどんどん率先していって欲しいですね。




Keith Yamashita

サンフランシスコのコンサルティング会社、 ストーン・ヤマシタ・パートナーズの共同創立者。

ソニー、IBM、ナイキ、アップル、GAP、 ヒューレット・パッカード、ハーマン・ミラー、 世界銀行など、世界のトップ企業のCEOや 経営幹部チームをサポートしている。


Jarin Tabata

SYPartnersのクリエイティブディレクターとしいて、 IBMの変革プロジェクトPlannedParenthoodの普及に携わる。またIDEOと協力しエイジングの改革に 取り組み、日本の企業文化を解き放つ新しいビジネスの 立ち上げに貢献している。